ポジティブな思考の連鎖を生むLizzoのエンパワーメントの源。
BY FEEL ANYWHERE
2023.05.09
2019年に「Truth Hurts」が、TikTokなどのSNSを通じて大きな反響を呼び、一躍その名を世界中に馳せたリゾ。パンデミックでパフォーマンス活動を思うように出来なかったにも関わらず、デビューから僅か4年で、グラミー賞の主要部門である〈年間最優秀レコード賞〉を含む2部門を今年受賞した。そんなリゾにみなさんは、どんな印象を持っているだろうか。
オーバーサイズの大きな体のシンガー。
奇抜で派手なファッションを纏うエンターテイナー。
お尻を突き出して腰を振るダンサー。
リゾから発せられる強烈なインパクトは、どれも多くの人が抱く印象なのだろう。しかしそれは表面的な捉え方でしかないのも事実。今回のアーティクルでは、リゾのパブリックイメージに隠された彼女の本質に触れていこう。
About Damn Time & Special (Live at the 65th GRAMMY Awards)
2022年2月に開催された第65回グラミー賞授賞式
リゾの腰振りダンスは、アフリカ系アメリカ人のルーツ
歌手、ラッパー、フルート奏者、作曲家、女優として人気を誇るリゾ。2016年10月にメジャーデビューEP『Coconut Oil』をリリースするが、リアルタイムでは大きな反響を獲得することはできなかった。しかしこのEPに収録された「Truth Hurts」が、2019年にTikTokなどのSNSを通じて大きな反響を呼び、なんとリリースから2年後に全米チャート1位を獲得する快挙を果たしたのだ。
そんなリゾムーブメントが起きる中でアルバム『Cuz I Love You』(2019年4月)をリリース。収録曲の「Juice」「Good As Hell」などの楽曲がヒットチャートを席巻。第62回グラミー賞 (2020年) では、初ノミネートにして〈最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス賞」を含む3部門を受賞する。そして『TIME』や『VOGUE』『ELLE』の表紙を飾るなど、時代の寵児となっていった。
2019年のBETアワード(アフリカ系アメリカ人の音楽やエンターテインメントに関する功績を表彰することを目的としたアワード)では、ウェディングケーキのステージに、ウェディングドレスの格好で登場。多幸感溢れるステージに、リゾのパフォーマンスの真骨頂を見ることができる。
Lizzo Proves She’s 100% That B***h In “Truth Hurts” Performance! | BET Awards 2019
間奏では得意のフルートを吹いたり、リアーナがノリノリで踊っている瞬間も映し出されている。
大きな身体を揺らし歌うリゾのステージはそれだけで圧巻だが、何と言っても、低くしゃがんだ体勢でお尻を動かし、挑発的にダンスするトゥワークのインパクトが大きい。このパフォーマンスを見て、下品な印象を持ったり、色もの的な目で見る人も多いことだろう。しかしリゾのトゥワークは、単なる話題性を狙ったわけではなく、黒人文化を継承しようとするリゾの想いが込められている。トゥワーク自体の歴史は浅いが、ダンスの動きそのものは、アフリカを起源とし数百年以上の歴史を持っているのだという。リゾは黒人先住民の文化をリスペクトし、黒人としての誇りと信念を持ち、このダンスに拘りを持っていることを理解しないといけない。
TED Talksに登場したリゾは、トゥワークのことを“魂のこもったスピリチュアルなこと”と紹介し、トゥワークの未来について語っている。 ジョークを飛ばし会場からの笑いを誘いながら、黒人としてのアイデンティを語り続けるリゾ。彼女をがそこまでの誇りを持ち続けた原点はなんなのか。
The Black history of twerking -- and how it taught me self-love | TED
Lizzoにとってトゥワークはトレンドではなく、神聖なものであったことを知ることができる内容。
深く知ればリゾの本当の想いが見えてくる
リゾは幼い頃から、肌の色や女性であることで差別的な扱いを受けたことに加えて、体型のことで辛い記憶を持っている。10歳の頃に「ディスコ・フライ」(脂肪の塊)というあだ名をつけられ、周りから笑い者にされた経験は彼女の心に大きな傷跡を残した。 自分自身が肥満であることに対する社会からの偏見や差別を幼い頃から多く経験してきていることについて、彼女は多くのインタビューで語っている。それが自分自身に対してネガティブな感情を引き起こしていた。
”私は幼少期にいじめを受けました。
私は肥満で、そのことが原因で周りから嘲笑され、仲間外れにされました。
その経験は、私に自分自身を愛することの重要性を教えました”
2019年 Billboardより
そんなリゾが拠り所にしていたのが、小学校の吹奏楽部で出会ったフルートだった。最初は担当教師からの勧めで始めたフルートだったが、やがて彼女は熱中し始め、フルートを演奏することにのめり込んでいく。フルートを演奏している時だけは自由に表現できることに歓びを感じたリゾ。彼女はフルート奏者を目指し、ヒューストン大学に進学するのだが、3年生のときに父親が他界する。経済的にも裕福ではなかった彼女は大学を中退せざるを得なくなり、同時に彼女のフルートへの夢は崩れていく。
しかし、リゾは自身を表現することを諦めたわけではなかった。全員女性からなるリズム・アンド・ブルースの3人組である”ザ・チャリス“を結成し、2012年にはファーストアルバム『We Are the Chalice』を発表。このグループの活動が、なんとあのプリンスの耳にも入り、プリンスとロック・バンド“3RDEYEGIRL“が2014年に発表したアルバム『Plectrumelectrum』に収録されている「Boytrouble」に、リゾはゲストラッパーとして参加する幸運に巡りあう。そして2013年にはソロのヒップホップ・アーティストとしてのデビューアルバムである『Lizzobangers』をリリース、活動の場を広げていった。
Batches & Cookies (feat. Sophia Eris) [Official Video]
2013年リリースの「Batches & Cookies」は、リゾが自分自身のルーツや経験に基づいた楽曲で、最初に自分自身を愛し自信を持つことの重要性を歌ったポジティブなメッセージが込められたもの。現在に繋がる彼女の音楽スタイルを示す作品。
周囲から好奇な目で見られ、嘲笑される経験を持つリゾ。黒人としてだけではなく人間としてのアイデンティティやマイノリティに関わる想いを、フルートを演奏することや、ヒップホップのフィールドなど様々な表現を使って多くの人に気付きを与えようとし始めていた。
そんなインディーズで活動中に彼女の転機となる出来事が訪れる。
それはファッション誌「StyleLikeU」が主催する「What's Underneathプロジェクト」に参加したこと。自分自身を表現するために、洋服を脱ぎ、肌や体型などの本当の自分を見せることができる場を提供するメディアとしての役割を持つ、このプロジェクトにリゾが起用されたのは2014年10月のことだった。
ここで自身のことを語りながら、身につけているアクセサリーや靴、ウィッグを外していき、最後には服も脱ぎ、下着姿で想いを曝け出していく。そして自分自身を受け入れ、愛することの重要性について語り、表現することがどのように自信や幸福感をもたらすことができるかを示していった。このリゾの勇気ある行動は、多くの人々に影響を与え、世界的な社会運動となっているポジティブ・ボディ・イメージ運動が、さらに勢いを増していくことに繋がっていった。
The Truth About Self-Acceptance.
What's Underneathプロジェクトですべてを曝け出すリゾ。この時彼女は25歳だった。
ポジティブ・ボディ・イメージ運動とは、女性の身体像に対する社会的な規範に疑問を投げかけ、それぞれの体型を受け入れることを促そうとするもの。1990年代後半のアメリカを中心に「自分自身を受け入れる」というポジティブなメッセージが広がり始め、肥満や障害を持つ人々が自分自身を愛し、自信を持つきっかけにしようとする動きに繋がっている。そして、いまでは多くの人の社会的価値観を変えるまでに至っている。
幼い頃から自分の身体へのコンプレックスを持ちながらも、同時にそうした自分自身を受け入れ、愛していきたいという想いを持つ続けていたリゾ。What's Underneathプロジェクトを通じて、自らが言葉で発信し大きな反響を得たことで、彼女は改めて自身が取り組む音楽や、発言、行動の重要性について深く考えるきっかけとなったのだろう。この経験に触発されて、キャリア初期のアルバム『Big Grrrl Small World』の主題とも言える「My Skin」が出来上がっていった。そしてリゾはヒップホップ・フィールドに止まらず、歌の持つ可能性、エンターテインメントの可能性を追求していくようになっていく。
My Skin (Official Video)
彼女自身の経験や信念が詰まった「My Skin」。
この楽曲はリゾがポジティブ・ボディ・イメージ運動をリードする中で、多くの人々にインスピレーションを与える作品となった。
ビッグガールズたちをポジティブ思考に変えていく
リゾの「いまの自分を受け入れ、自分を愛そう」という考えは、ボディポジティブイメージを中心に、セクシュアリティや人種などの「様々な多様性を受け入れ、それを肯定していこう」という考えに広がりを見せていく。そのひとつの象徴が、オーバーサイズの黒人女性で構成されたバックアップダンサーのThe Big Grrrlsだ。リゾのライブパフォーマンスでのバックボーカルや、彼女の楽曲のレコーディングに参加するなど、重要な役割を果たしている The Big Grrrls には、体型や肌の色、女性に対する偏見や差別を乗り越え、自分自身を受け入れ、社会にも認めさせていこうとするリゾの想いが込められている。声高に訴えるのではなく、エンターテインメント化させることで日常的に溶け込ませようとするリゾが見つけた方法論なのかもしれない。 The Big Grrrlsはリゾの重要なパートナーであり、言わば行動を共にする同志のような存在で、いまではパフォーマンスに欠かせない存在になっている。
Lizzo's Watch Out For The Big Grrrls - Official Red Band Trailer | Prime Video
Amazon Prime Videoシリーズ『リゾのビッグスター発掘』のティザー映像。リゾプロデュースによるこの番組はプラスサイズの有色人種の才能ある女性たちの中から、自身のツアーのバックダンサーを探していく内容で「多くのビッグガールズに活躍の場を」というリゾの想いが込められている。
そしてThe Big Grrrlsの活動に参加したことでメンバーたちの心の変化も生まれている。そんな彼女たちの言葉に、リゾの行動の本質を感じることができる。
“いままで電車の中でカラダを小さく縮めようとしていたけど、その癖を直すようにする。
みんな大きくても構わないし、場所をとっても構わないんだって”
“この瞬間に立ち会えて、私にも価値があると感じられた。
ステージに立って、ステップを踏んで、
みんなと一緒に踊ると、自分の存在を認められるの”
そして涙を流しながら語るThe Big Grrrlsたちにリゾはこう話すのだ。
“あなたたちは本物のビック・ガールだし、私たちのパフォーマンスは
笑い者にならない 大真面目よ”
HBO Maxドキュメンタリー番組『Love, LIZZO』(2022)より
またリゾは、2022年に補正下着ブランド「Yitty」をスタートさせた。
“自身が補正下着を着用していた頃に感じた恥ずかしさを、同じ女性にそんな想いをさせたくない”という想いがあったが、ブランドメーカーに話しても後ろ向きだったことから、「Yitty」を自ら立ち上げ、多くの女性をハッピーな気持ちにさせたいのだと語っている。
逆風を乗り越えていくリゾ
GLASGOW, SCOTLAND - MARCH 08: Lizzo performs on stage at The OVO Hydro on March 08, 2023 in Glasgow, Scotland. (Photo by Roberto Ricciuti/Redferns)
曲の人気に加え、エンターテインメントを通じてポジティブ・ボディに関するメッセージを発信することで支持を得て人々を勇気づけてきたリゾだが、短期間でスターに上り詰めた彼女を快く思わないヘイターたちや、肥満そのものを嫌悪する人たちからの批判や嫌がらせを受けてもきた。また黒人社会からも、「リゾのパフォーマンスは黒人カルチャーに敬意を払っていない」「白人のフェミニスト向け」と非難を浴びることもあった。
リゾはそんな声に思い煩い時には落ち込む日々もあった。それでも彼女が言い続けているのは「ただ受け入れて欲しいだけ」ということ。それはシンプルなことだが、社会はそうたやすく変革はしない。多くの黒人女性たちは同じような逆風に逢いながらも、それでも行動を続けている。リゾもその変革者のひとりとして、こんな言葉を残している。
“愛を受けられない社会の中で、自分自身を愛することは、
優れた自己認識と、社会の標準に逆らう力が必要です。
もしあなたが今日、自分自身を愛することができたなら、
私はあなたを誇りに思います。
まだそうでない場合でも、私はあなたを誇りに思っています。
なぜなら、このことは本当に難しいことだから”
そんな逆風の中でリゾを間接的に励ましていた女性がいる。それは、彼女がディステニー・チャイルドの時から憧れていたビヨンセだった。リゾはインタビューでビヨンセに対して、こんな想いを語っている。
“ビヨンセは、ただ音楽を世に出すためだけに
音楽をリリースしているのではないはず。
リリースする音楽にはいつもリアルなものを感じ、
何かを教えてくれる瞬間がある。
だから毎回彼女の音楽を聴くと、
「私も人々をこのような気持ちにさせたい」って思うの”
リゾのパワーの源にビヨンセの存在は大きかったはずだ。
それを物語るのがグラミー授賞式でのスピーチで、たくさんの人たちへの感謝を述べた最後にリゾは涙まじりにビヨンセへの感謝を口にしたのだ。
“ビヨンセにも感謝します。
学校をさぼってあなたのライブを見に行きました。
涙で前が見えません。
あなたは私の人生を変えてくれました。
私がどう感じればいいかということを、音楽を通して教えてくれました。
あなたこそがアーティストです”
様々な社会課題や逆境に立ち向かい、歌っていくビヨンセの姿から、リゾは大きなエンパワーメントを授かっていたはずだ。そしてリゾもまた同様に、逆境に怯むことなく前に進んでいく。そんな姿に人々は賛同し、リゾのエンパワーメントもまた大きくなっているのだろう。
Wins Record Of The Year For 'About Damn Time' | 2023 GRAMMYs
グラミー授賞式でのスピーチの様子。
ポジティブな思考になれるリゾの楽曲たち
リゾの持つ人々を確実に変革させていくパワー。もちろん、その源泉は彼女の歌に一番込められている。
ここからは、多くの人をポジティブ思考に変えていった彼女の楽曲をいくつか紹介しよう。
♫Truth Hurts (2017)
リゾにとって、間違いなくエポックメイキングとなった楽曲が「Truth Hurts」。〈just took a DNA test, turns out I'm 100% that bitch〉というフレーズが話題になり、多くの若者たちがこのフレーズを使った動画を投稿するなど、リゾへの関心度が急激に高まっていった。リズミカルなピアノのループによるメロディが、気分を明るくさせてくれるのも「Truth Hurts 」の魅力。
Truth Hurts (Official Video)
♫Cuz I Love You (2019)
2019年に大ブレイクしたアルバム『Cuz I Love You』の表題曲。リゾには想いを寄せる大切な人がいたのだが、その関係は彼女が望んだものにはならなかった。「Cuz I Love You」の歌詞に込められた想いを想像すると、おそらくこの楽曲は、その大切な人への想いと同時に、その気持ちを断ち切ろうとする覚悟を感じるのだ。また幼い頃から教会でゴスペルを歌ってきたリゾの本領発揮というべき壮大な歌声が胸に沁みてくる。
ここで紹介する動画の「Cuz I Love You」はリゾがグラミーを初受賞した時のものだが、後半にはオーバーサイズの黒人女性のバレリーナが登場する。何気に見てしまうとそのインパクトだけに目がいきがちだが、ここにもリゾの核心の想いが込められている。アメリカにおいて、黒人でしかも豊満な女性のバレリーナは極めて少ない。その理由は排除されてしまうからだという。体型や肌の色のせいでバレエを習う機会を得られない現実に、リゾはエンターテインメントを通じて一石を投じようとしたのだ。
Cuz I love you, Truth hurts (presentación completa en los grammy 2020)
♫Juice
2019年にリリースされた「Juice」は、曲の冒頭からリゾの力強い歌声に、自信に満ちていることを感じることができる。歌詞には、自分自身を愛し、自信を持って生きることの重要性が繰り返し語られている。リゾは〈I'm blessed, I'm loved, I'm a queen, I'm a star〉と歌い、自分自身を素晴らしい存在として称えている。そして〈If I'm shinin', everybody gonna shine〉と続け、自分が輝けば、周りの人々も同じように輝くことができることを表現していくのだ。
身体が動き出さずにいられないほどキャッチーなビートと明るいメロディだが、リゾが何を人々に共有していこうとするのかが理解できる楽曲だ。
リゾ「Juice」【日本語字幕付き】
♫About Damn Time
ディスコチックな軽快なポップソングでドライブソングやワークアウトにもぴったりな楽曲だが、そんなメロディの中に、リゾが長年にわたり経験してきた人種差別、セクシズム、体型差別に対する怒りと、それに対する前向きなアプローチが表現されている。曲の冒頭から、過去に自分自身を抑圧してきた人々に向けて、「あなたたちは私をこの状況に追い込んだ」と宣言し、彼女の怒りを表明している。しかし、彼女はそれでも自分自身を受け入れることを決め、自己肯定感を高め、自分自身を受け入れるためのプロセスに入っていく。
社会的な課題をあくまで軽やかに歌いながらも、そのパワフルなメッセージは、多くの人にインスピレーションを与えるものとなっているのではないだろうか。
この楽曲でリゾは第65回グラミー賞の主要4部門のひとつである年間最優秀レコード賞に輝いた。
【和訳】Lizzo「About Damn Time」short ver.【公式】
♫Good as Hell
「Good As Hell」は2016年にリゾのデビューEP『Coconut Oil』のリード・シングルとしてリリースされた楽曲だったが、2019年10月にはアリアナ・グランデが参加した新たなバージョンも発表されている。このようなリリースはあまり事例がないのだが、それほどまでにポテンシャルを持つ楽曲だという表れなのだろう。興味深いのがミュージックビデオ。同じ曲であるのに表現方法のアプローチが異なっている。
2016年にリリースされた初期のバージョンでは、 リゾがテキサス大学オースティン校のホームカミングイベントでパフォーマンスをするというストーリーに基づいている。それぞれの若者たちがいろんな悩みを持ちながらも、最後には笑顔になっていく様子が胸を打つ内容だ。
Good As Hell (Official Music Video)
2016年にリリースされた初期のバージョン。
もう1つのバージョンのミュージックビデオは、リゾの音楽キャリアが飛躍的に成長した後にリリースされた。ここでは、女性たちが自分自身を愛することの重要性を表現するストーリーに基づいている。リゾが歌詞に合わせてダンスするシーンで始まり、その後は異なる女性たちが、自分自身を表現し、自信を持って踊るシーンに移っていく。自信を持つことが苦手だった女性たちが、自分自身を認めていくことがどんなに素晴らしいことかを表現しており、多様性と包括性に焦点を当てたアプローチだ。皆さんはどちらに共感するのだろうか。
「Good As Hell / グッド・アズ・ヘル」【日本語字幕付き】
リゾの旅は続く
リゾはAmazon Prime Videoシリーズ『リゾのビッグスター発掘』で2022年のエミー賞<優秀コンペティション番組>部門の栄冠に輝く。 この時の授賞式で披露した心のこもった感動的なスピーチは、多くの人の胸に刺さるものだった。
“少女の頃の私は、メディアで自分を見たかった。
私のように太っていて、黒人で、そして美しい人を。
あの頃のリゾに言いたい。
あなたがその人になるのよ”
リゾのメッセージはアメリカ社会だけに影響するもではなく、普遍的なものとして捉えるべきかもしれない。最近、顕著になっている問題にアイデンティティ・クライシスがある。
若い世代の中で「自分が何をしたいのかわからない」「社会で自分の存在価値はあるのか?」 といった精神状態に陥ってしまい、鬱症状となってしまうことだ。彼女がアイデンティ・クライシスを意識しているかどうかはわからないが、何かを示唆してくれているかのようでもある。
リゾの言う「自分を愛する」ということは、「自分を可愛がる」ということではなく、自分自身を深く洞察して自分を知ることだ。彼女が言うように、それは簡単なことではないかも知れない。でも、リゾの大声で笑う姿やパフォーマンスを見ていると「こうすればいいのか」と心を軽くしてくれるような考えも生まれてくる。
最後にリゾの「Special」を紹介しょう。完璧でいることを歌っているのではなく、どんなささやかなことでも「自分を肯定できる小さなカケラを見つけてみない?」と語りかけてくれているようにも聴こえてくる。
Special [Official Video]
マーベル映画さながらスーパー・ウーマンに変身し街全体を救うリゾ。
コミカルな演出ながら、これからリゾが向かう道への意志を感じることができる。
当面、目が離せないリゾだが、そんな彼女が今年の『FUJI ROCK FESTIVAL』に登場する。誤解を恐れずに言えば、今年のフジロックはリゾと同じ空間にいることができるだけでも行くべき価値のあるものになるはずだ。ぜひこのスーパー・ウーマンのステージからエネルギーを受け取ってみてはどうだろう。
PLAYLIST